こんにちは、かなとです。
深かったです。『じい散歩』!
なぜ『じい散歩』が今、読むべき本なのか
『じい散歩』は、私たち自身や私たちの家族、さらには社会全体について考えるきっかけを与えてくれます。
このブログでは、藤野千夜が織りなす物語を通じて、現代社会の重要なテーマをどのように考え、読者に何を伝えようとしているのかを探究してみます。
この物語は、現代日本の家族のあり方、高齢化社会、そしてそれらが私たち一人ひとりにどのように影響を与えるかを見事に映し出しています!
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著者紹介:藤野千夜
藤野千夜の略歴と著作
・生年月日: 1962年2月27日生まれ
・出身地: 福岡県
・経歴: 麻布中学校・高等学校、千葉大学教育学部卒業。漫画雑誌の編集者を経て、1995年に小説家デビュー
・受賞歴: 第14回海燕新人文学賞受賞(「午後の時間割」)、第20回野間文芸新人賞受賞(「おしゃべり怪談」)、第122回芥川賞受賞(「夏の約束」)
・その他の著作: 『団地のふたり』、『ルート225』
『じい散歩』の背景とインスピレーション
・『じい散歩』の主人公 明石新平は、藤野千夜の友人の父親がモデル。
・明石家の3兄弟は、藤野自身の家族がモデル。
・作品の発想は、約10年前の友人の実家での法事から得られた。
・実際の家族の会話と経験からインスピレーションを得て、小説の中で新平のキャラクターが形作られた。
『じい散歩』のあらすじ
あらすじ
明石家の紹介
明石家は夫婦合わせてほぼ180歳です。
一家の主、新平は散歩が趣味の健啖家で、妻は新平の浮気を疑っています。
家族には長男、次男、末っ子の3人の息子がいますが、それぞれ独自の問題を抱えています。
日常生活:
新平は健康フードを食べ、午後は3〜4時間の散歩を楽しむ元気な高齢者です。
妻の英子は90歳を過ぎて倒れてからも、新平が介護をしながら日常生活を送っています。
家族の問題
新平の長男は高校中退後引きこもり、次男は自称・長女であり、末っ子は事業に失敗して借金まみれです。
それぞれが自閉傾向、ジェンダー、散財といったテーマを抱えています
登場人物
・新平: 明石家の主。散歩が趣味の健啖家で、女性とのコミュニケーションが大好き。外出は洒落た建物巡りが中心。
・英子(妻): 新平の妻。90歳を過ぎて倒れてからも、新平が介護をしながら日々を過ごしている。新平の浮気を疑っている。
・長男: 高校中退後、ずっと引きこもっている。
・次男: 自称・長女であり、しっかり者。
・三男: 事業に失敗し、借金を抱えている。
物語の特徴
家族の日々
色々あるけれど、家族の日々は続いています。この物語は、そんな一家の日常をユーモラスに、温かな眼差しで綴った現代家族小説です
家族の絆の描写
藤野千夜の「じい散歩」は、一見すると穏やかな散歩の物語ですが、実際には家族の絆、老いと向き合う姿勢、そして日本社会の抱える問題点を深く掘り下げています。
新平の散歩(家族の微妙なバランスを映し出す)
物語の中心人物、新平は健啖家で、散歩が趣味です。
彼は夫婦合わせてほぼ180歳という高齢にも関わらず、健康フードを摂り、毎日の散歩を楽しんでいます。
この散歩は、新平自身の健康維持だけでなく、家族との関わりや外の世界との接点としても役割を果たしています。
明石家の日々(小さな試練を通じて育まれる絆)
明石家の家族構成はユニークです。
新平の妻は彼の浮気を疑い、長男は引きこもり、次男は自称・長女のしっかり者、末っ子は借金まみれ。
これらの問題は、一見すると家族の安定を脅かすものですが、新平はこれらをおおらかに受け止めています。
この家族のあり方は、社会問題と密接に関わりながらも、個々のメンバーが支え合う家族の強さを示しています。
散歩を通じて深まる、家族の絆と理解
物語の中で、新平の散歩は単なる趣味以上のものです。
彼の散歩は、家族間の問題や社会の変化と密接に結びついており、読者にはその散歩が家族の絆の象徴として映ります。
また、彼の妻への土産は、夫婦間の愛情と理解を表しているかのようです。
読者の感想(共感を呼ぶ家族の物語)
読者からは、新平の散歩のテンポや家族に対する暖かい態度が心地よいとの声が多く聞かれます。
ある読者は「新平のゆるい散歩のテンポが心地よく、一緒に歩いているような気分になります。「どうしようもないけれどこれが、家族」と評しています。
「じい散歩」は、家族の絆と社会問題を織り交ぜながら、老いへの前向きな姿勢を描いています。
新平の散歩を通じて、家族の問題や日々の生活が深く反映されており、読者には共感と温かさを与えてくれます。
社会問題の反映
・本作が取り上げる主要な社会問題(高齢化社会、経済問題など)。
・物語と現実世界の問題との関連性。
8050問題と家族の問題
本作では、90歳を跨ごうとする新平と英子の5年間を描いており、いわゆる「8050問題」を反映しています。
この問題は、高齢の親とその50代の子どもが共に高齢化し、介護や経済的自立などの問題に直面する現象を指します。
また、家族内での引きこもり、LGBT、経済的自立不能、未婚などの問題が取り上げられています。
夫の過去の女性関係や妻の認知症の問題も描かれており、これらの問題は戦争、高度経済成長、バブルの崩壊、そしてコロナウイルスの流行などの社会問題や時代の流れと合わさって現在が形づくられています。
現代日本の家族問題
本書は、明石家の夫婦(夫婦合わせて180歳近く)とその家族を通して、現代日本の家族問題を浮き彫りにしています。
長男の引きこもり、自称長女でしっかり者の次男、借金まみれの三男など、家族の様々な問題が描かれています。
老いとの向き合い方と時代の変遷
この小説は、ユーモアとシリアスのバランスが絶妙で、老いや時代の移り変わりというテーマを重苦しくなく描かれています。
新平の一挙一動と周囲の様子が詳細に描写されており、「時代」という大きな枠組みの中で、新平が淡々と進んでいく様子が伝わってきます。
読者の感想とレビュー
肯定的な評価
・主人公の逞しさと家族関係の描写が暗さを感じさせず、ポジティブな影響を与えている。
・物語の散歩のテンポと家族の絆が心地よく、温かい感情を呼び起こしている。
・じいさんの散歩のテンポや、一緒に歩いているような気分になる心地よさを感じており、家族との関係の描写が温かく、ちょっと切ないと評価しています。
・健康寿命が延びる現代において、老後の問題をリアルに感じさせる内容として本作を評価しています
・家族のそれぞれの問題はあるが、暗さを感じさせない描写がされている
否定的な意見
・ストーリー展開にあまり興味を引かれなかった。
・物語のストーリー展開に関して、散歩の話がメインではなく、とりとめのない展開にあまり興味を惹かれなかった。
・話が極端で、家族の問題に関して共感が持てなかった。
・ストーリー展開に関して途中から悶々と感じ、家族間の問題や日常の描写が重く感じられた
これらの意見は、『じい散歩』が読者に与える影響の多様性と、その深いメッセージを反映しています。
『じい散歩』に対する読者の意見が分かれていることは明らかで、肯定的な意見と否定的な意見の両方が存在し、作品が読者に様々な影響を与えていることがわかります。
作品のまとめとおすすめの理由
『じい散歩』は藤野千夜による、深みとリアリティに満ちた家族小説です。
主人公・新平は90歳を超え、日々の散歩や建築に対する深い愛着を通じて、健康と情熱の両立を見事に描いています。
新平と彼の妻・英子との間の複雑な関係は、物語に多層的な感情をもたらします。
この作品は、高齢者の日常生活を超えて、現代日本社会が直面する家族関係の複雑さや高齢化に伴う問題に焦点を当てています。
新平の3人の息子たちは、それぞれ異なる個性と困難を抱えており、現代家族の多様性と複雑性を表現しています。
これらの要素が組み合わさり、『じい散歩』はただの家族物語を超えて、社会的な深い洞察を提供する作品となっています。
同様のテーマを持つ藤野千夜が描く別の作品のおすすめは
『じい散歩 妻の反乱』
『じい散歩』の続編です。93歳の新平が脳梗塞で倒れた妻・英子を介護します。彼は毎日の体操と散歩を続ける一方で、3人の問題を抱えた独身息子たちとの関係も描かれます。
『団地のふたり』
幼馴染みの奈津子とノエチの関係が描かれた作品で、日常生活の中でのんびりした時間と友情が描かれています
『ルート225』
藤野千夜の作品で、読者からの評価が高い一冊です。この作品は、家族や個人の生活に焦点を当てた内容となっています。
しかし、この本は、中古品では入手可能ですが、新刊、電子版としての販売は確認できませんでした。
藤野千夜による原作と志村貴子による漫画でシリウスコミックスから電子版で入手可能です。
『君のいた日々』
パートナーに先立たれた一組の夫婦の物語で、同じ家族、同じ設定で二つの話が交互に語られ、家族関係や個々の感情の複雑さが描かれています。
『編集ども集まれ!』
藤野千夜の編集者時代を描いた自伝的小説で、80~90年代の出版界のエピソードを通じて、当時の社会や人間関係を深く掘り下げています。
これらの作品は、『じい散歩』と同じように、家族の絆や社会問題に焦点を当て、現代社会の様々な側面を描いています。
藤野千夜の独特な文体と視点は、読者に新しい洞察を提供し、深い感動を与えることでしょう。
小説も含め、多くのジャンルの本が聴き放題で楽しめます。
「じい散歩」も読み放題に含まれます。続編の『じい散歩 妻の反乱』は2/16から配信予定です!
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『じい散歩』と同じく家族の絆と日本社会の問題点をテーマに持つ他の著者作品のおすすめは
『ははのれんあい』 by 窪美澄
この小説は、戸籍上の繋がりはないが家族としての絆を持つ人々に焦点を当てています。由紀子と彼女の子供たちは、離婚、再婚、義理の家族など複雑な家庭環境を通じて、新しい家族の形を築いていきます。この作品は、壊れた家族が変化し続ける中で、みんなが繋がりながら新しい家族の形を作っていくプロセスを描いています。
『昨夜のカレー、明日のパン』 by 木皿泉
この物語は、亡くなった男の父と嫁が中心です。二人には血の繋がりはありませんが、共通の悲しみを共有する家族です。この物語は、二人が周囲の人々と共に亡き一樹の死を受け入れていく日々を描いており、ユーモアある不思議な物語として描かれています。
『サードキッチン』 by 白尾悠
この作品は、1998年に父が亡くなった後、母と二人暮らしをする尚美が主人公です。彼女はアメリカに留学し、日本人であることに悩みながらも、家族との関係を再考します。この物語は、家族との関係が時間とともに変化し、家族の絆が切れないものであることを探求しています
『とんび』 by 重松 清
この小説は、愛する妻の事故死の真相を息子に隠し、精いっぱいの愛情で育てる父親ヤスと息子の物語です。父親と息子の間の不器用ながらも強い絆を描き、家族愛の重要性について考えさせる作品です。
『重力ピエロ』 by 伊坂 幸太郎
この物語は家族にとって何が大事なのかを問うもので、家族小説としてもミステリとしても読むことができます。伊坂幸太郎の作品らしいユーモアとセンスのある会話が特徴で、家族愛の深さを感じさせます。
これらの作品は、家族の絆や社会問題に関する深い洞察を提供し、『じい散歩』に興味を持った読者にとって魅力的な読書体験を提供するでしょう。
最後に
この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「じい散歩」という一見穏やかなタイトルの背後に隠された深い物語と、藤野千夜が描く家族の絆と日本社会の抱える問題点についての私たちの探求は、ここに記した内容にとどまりません。
この本は単なる物語以上のものを私たちに提供しており、読者一人ひとりが自身の経験や考えを通じて、さらに多くの発見をすることができると思います。
「本心」も読み放題に含まれます。
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